”脩(オサム)ハーケン”

えっせい
関東地方で岩登りトレーニングのメッカと云えば、やはりその
規模からして三つ峠の”屏風岩”だと思う.
その屏風岩の右フェース最上部に、”天狗の踊り場”と呼ばれる
3畳ほどのテラスがある.
”天狗の踊り場”から上は、もう岩場らしい所は無く事実上の
登攀終了点で、ここからは遮るものの無い真正面に富士山
眺められる.

ここに、固い御影石に埋め込まれた、

          ”脩(オサム)ハーケン”
がある.
通常の2倍はある脩ハーケンは、天狗の踊り場と共に、
クライマ−の憩いと安堵感の象徴になっている.
ここまで登って来て、この脩ハーケンにカラビナをガチャリと
掛け、ザイルを固定すると、ホッとしたものだった.

ん十年前、先輩に引っ張り上げられて、初めてこのテラスに
登り着き、脩ハーケンに自分の安全ベルトのカラビナを掛けた
時の感触は忘れられない.
また、この直下にある垂直の”ブツブツフェース”で、初めて
アップザイレンした時も、脩ハーケンでガッチリ確保して貰った.

あまり知られていないが、天狗の踊り場のすぐ上、潅木と岩に挟まれた一帯には、この三つ峠の岩場で
亡くなったクライマ−の”お墓”があり、レリーフや岩に刻み込まれた先人の墓碑が至る所にある.
夏になると、このお墓にミヤマハハコグサが咲き、若くして散ったクライマ−を慰めている.

天狗の踊り場から岩頭を少し登り、良く踏まれた潅木を漕ぐと、容易に三つ峠の頂上へ行けるが
そこまで行くと、赤や黄色のヤッケに身を包んだ登山者の居る別世界である.

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