(浅田次郎)
本あれこれ

天切り松闇がたり

/闇の花道
”天切り”とは「天井の瓦を剥がして入る強盗」の手口の事.

物語は、警察の留置場の雑居房に入ってきた、老人(天切り松)から始まる.
看守の話では、そこの警察署長と懇意の老人とかで、時々、署長に頼まれて
「防犯のお話」をしに来ては、その見返りに留置場へ泊る権利を得ているとか.
同宿のヤクザ者とか、地上げ屋とか、ゲーム屋の店主とかが、新入りの老人の
身の上について斟酌している内に、その老人の語りだした稀代の夜盗一家
(...と、言っても、大正初期の義理、人情、仁義に溢れた一家で、老人も
その内の一人だった)の話に引き込まれてしまう.
いつの間にか「おい、じじい!」と、寝そべって呼び付けにしていたのが、
正座して、手をキチンと膝に置いたりして.....
六尺四方(これが何uかはさておき)から先へは届かないという、夜盗独特の
話し方”闇語り”で、物語は綴られていく.

第一巻”闇の花道”は、天切り松の幼少時代.
父親に手を引かれて、東京一円/2000人の夜盗を仕切っている大親分、
”仕立て屋銀次”の元へ売られて行く所から、始まる.
ここで、銀次が網走の監獄に入れられている間、一家を仕切っている”抜け
弁天の安吉”や、その子分一味との生活が始まる.
やってる事は泥棒でも、貧乏人からはビタ一文取らないという、警察でさえ一目置く一味の人情溢れるエピソード
が、天切り松の口から、次から次へ語られていく.

”振袖おこん”と、時の公爵:山県有朋との悲恋物語、”黄不動の栄治”が天切り松のたった一人の姉を花街から
救い出す話(最後には悲しい別れになってしまうが...)や、古き良き時代の人情に溢れた話が第5話まで続く.

浅田次郎さんは、最近余り見られなくなった「心の洗われる物語」を書く、本当の作家であると思う.

それにしても、ジロウさんよ.
ワッチのヨーな旅ガラスにゃ、文庫本しか、カバンに入らないっつうのよ!.
お願い!、早く次をだして−.
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