蒼穹の昴(1〜4)
(浅田次郎)
本あれこれ
これは、凄まじい大作である.

何が凄まじいかと言うと、中国”清”の時代の
世情を余すことなく描き切っているだけでなく
その中に、一人の少年(糞拾いの極貧の少年)が、
占い師の予言を信じて宦官(男の大事なモノを取って
後宮へ上がる)となり、運命に翻弄されながら出世して
いく有様と、時の権力者で悪名高い西太后との関係.
少年(春児と言う名前)の兄貴分にあたる文秀という
秀才との軋轢.
文秀が役人になるための”科挙”という試験の様子
などは、自分が、まるでその場にいるような臨場感
がある.

悪名高い西太后が、実は中国5千年の歴史の
最後である”清”の時代を終らせるために、わざと
浪費や悪行を重ねているという”裏”の話を織り交ぜ
、なんとも浅田さんらしいストーリィの展開と緻密な
時代考証は、読み終えて、”も一回読まにゃ”と、
今も、3回目読み返している最中である.

”蒼穹の昴”は、最初、早く読みたくて厚手の単行本が出た時に買って、出張中にも重たいのを我慢して
持ち歩いたが、単行本は残さない主義なので、読んだ後、友人のK藤にあげた.
その後、また読みたくなって、文庫本が出たので再度、一気に読んで.....また、読み返している.
それほど、この小説は、浅田さんの本の中でも、読み応えがあると自分は思う.

「シェラザード」や「日輪の遺産」も、長編で面白いスト−リィだったが、それを凌ぐ名作であると私は思う.
「鉄道員」「天国への百マイル」「壬生義士伝」「シェラザード」等、映画、TVなどで映像化されて来たが
この小説だけは、ちょっと難しいだろうな〜と、余計な事を考えている.
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