”山本幡男の遺家族のもの達よ!.
到頭ハバロフスクの病院の一隅で遺書を書かねばならなくなった・・”
この文章で始まる、字数にして4500字もの遺書がある.
第二次世界大戦で当時の満鉄から召集、敗戦でソ連軍に捕らえられ
過酷な抑留生活の末に、昭和29年8月ハバロフスクの強制収容所で
亡くなった山本幡男氏の遺書である.
この本の前半は、シベリアに抑留され極寒と飢餓と重労働の日々を
送る男達の中で、希望を捨てず仲間を励まし続けた山本氏の姿が.
後半では、病魔と闘いつつも帰国の夢を果たせず亡くなった山本氏と
その遺書を、彼を慕う6人の仲間達が驚くべき事に分担して”記憶”し、
氏の2年半後に、次々とその分担分を遺族の元へ送り届ける内容と
なっている.
”記憶”しなければならなかったのは、遺書が監視員に見つかると
没収、焼却される状況にあったからとされている.
これらは全て実話である.
この本を知ったのは、NHKアナウンサ−/山根基世さんの書かれた
「であいの旅」だったと記憶している.
最近では戦後60年を記念し、「平田満」主演で舞台化されていた.
”吉祥寺シアタ−”でも3日間公演されていた様で、気付くのが遅く、
見られなかったのは、返す返すも残念である.....
辺見じゅん 著(文春文庫)
本あれこれ
収容所(ラーゲリ)から来た遺書
2006.01.22