プリズンホテル(夏、秋、冬、春)
(浅田次郎)
本あれこれ
浅田さんの本では、やっぱりこの「プリズンホテル」を
紹介しとかないと.....

主人公は、大分曲折した(と言うか、全く曲折した!)
精神構造を持つ、超売れっ子の極道作家.
この作家の叔父(ヤクザの大親分)が、温泉リゾートの
山の上に作った”その筋の方専用ホテル”が舞台.

ホテルの本当の名前は”奥湯元あじさいホテル”という
カッコいい名前が付いているらしいが、地元のタクシ−
の運転手や警察でさえ、だれも正式名称では呼ばず、
”プリズンホテル”と呼んで恐れている曰く付きのホテル.
(プリズンホテルと言えば、極東軍事裁判の戦犯が収容
 されていた「東京プリズン」というのがあった.....)

この、ホテルの従業員がまた異色!.

副支配人は、一目見ただけで震え上りそうな巨漢で、
坊主頭の元ヤクザ.
番頭や仲居は、どれも曰くありげな東南アジア系.
バーテンでさえ、平気でピストルを振り回す、根っからの鉄砲玉と役者が揃っている.

しかし、支配人は、某ホテルグループから左遷されてきた、勤続30年の勤勉実直な超ベテランの
ホテルマン.板長は、職人気質の超一流で、若いが西洋料理の達人シェフとの組合せ.

マトモナ人と余りマトモでない人、この異文化・両極端が寄り集まって、このホテルを営んでいると
いうだけで、”なんか起こりそう”と期待してしまう.

お膳立てが充分な所へ、訪れる客がまた普通でない.

      ・知らずに来た”離婚寸前”の老夫婦
      ・破産して町金融に追われ、自殺しに来た家族連れ
      ・ヤクザの団体と、そうとは知らず親睦旅行で来てしまった警察の団体
      ・懲役52年という老博徒
      ・遭難しかけた少年とそれを助けた山男
      ・etc、etc

その客達が、一様に暖かい気持ちでホテルを後にする、感動の話です.

こんなホテルがあったら行って見たい.....いや、やっぱり遠慮しとこ−!.
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