本あれこれ
本居長世(もとおりながよ)
江戸時代の国学者・本居宣長を知っていても、
本居長世』」をご存知の方は、少ないのでは
無いかと思う.
実は、私もその一人であった.

余談だが・・・・
“本居宣長”の旧宅、「鈴屋」は、
三重県松阪市
の松阪城の一角に移されて資料館になっている.
またまた余談だが・・・・
私の郷里が伊勢と松阪の中間にあるので、小さい頃
お袋に連れられてよく鈴屋へ行った.
自宅で和裁の先生をしながら、お茶、お花、料理と、
いわゆる“花嫁修業”を教えていた母が、松阪に
あった花屋へ教材の花を取りに行くからである.
時間が空くと「鈴屋」へ連れて行ってくれ、帰りに
名物の鈴モナカを食べさせてくれた.

前置きが長くなったが・・・・・
本居長世』は、明治18年4月4日東京に生まれた
童謡作曲家であり、この本居家の6代目に当たる.
国学者の宣長と異なり、長世さんは東京音楽学校を
経て母校の教師となり、数々の童謡を世に送り続けた.
誰でも小さい頃一度は唄ったことのある童謡の数々
・・・・・・百二十曲余.

 ・七つの子、赤い靴、十五夜お月さん、通りゃんせ
  夕やけ、お山の大将、・・・・

これらの歌を作曲された「本居長世」に感動され、十八年の永きにわたって紹介され
続けてこられたのが、松阪市で「本居長世メモリアル ハウス」の館長を務められて
いる、この本の著者である.
全く、頭が下がる.

この本のはじめにある・・・・・

   =遠い日、大人たちが、子供のために情熱を傾けたことがあった.
   子供たちの心を豊かにしようと、秀れた芸術作品を創作し、
   送り続けた時代があった・・・・

は、実に、『本居長世』その人を表わした名文である.

新聞紙上をにぎわしている、子供を巡るさまざまな事件を考える時、この本を通し、
本居長世を通して教えられる事の多い名著であると思う.
松浦良代 著(図書刊行会)
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