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”初湯千両”を出してから3年振りですかね、次郎さん.
ちょっとジラシ過ぎやしませんかね、これは...

と、文句を言いつつ本屋に走り、”闇がたり/昭和侠盗伝”を
購入、寝る間も惜しんで一気に読む.
なにしろ、このシリーズは、読み出すと止まんネェ!.
同期連中の老眼鏡を笑っていた自分が、最近、本を読むとき
メガネのお世話になる事が多くなった.
目が疲れて困ると思いつつも、止まらねぇんじゃ...

さて本題.
相変わらずの名調子で、天きり松こと松蔵が、昭和初期の
東京を舞台に語る”人情盗人物語”.
  ・第一夜:昭和侠盗伝
  ・ ニ  :日輪の刺客
  ・ 三  :惜別の譜
  ・ 四  :王妃のワルツ
  ・ 五  :尾張町暮色

特に、表題になっている”昭和侠盗伝”が良かった.
”爆弾3勇士”の銅像の除幕式に合わせ、目細の安吉一家が
総出で、日本の最高位の勲章3つを盗み、それぞれの首に
掛けておくと云う話.

”えれぇのは兵隊で、偉いお人じゃござんせんよ”と云う意味も
あるのだろうが、銅像の除幕者は3人の母.
”なにも、腹を痛めた母親に、爆弾筒を抱いて敵陣へ突っ込ま
せた銅像の除幕をさせるこたぁねぇだろうが”が、いつも弱者
の側に立ってものを考える作者の優しい心を表している.


いつもながら天きり松の、江戸っ子らしいスカッとした語り口と、
常に地に足をつけた分かり易さには引き込まれる.

*お天道様と、風と土だけありゃあ、人間は幸せなんです.
  そのほかのものは、みんなおまけで...

天切り松 闇がたり
本あれこれ
浅田次郎 著(集英社文庫)
/昭和侠盗伝
08.03.28