05.12.11
ここ1週間、山へ行くには最高のお天気が続いているのに、柄にも
無く風邪を引いてコタツで読書!...で、浅田さんの本を読む.

「待つ女」って云うのは、題名からして読む前から期待してしまうが、
内容は、いかにも浅田さんらしく...
「一代で築き上げた会社の社長となり、功なり遂げた主人公の、
雨の日の京都を舞台にした、若き日の切ない恋」.
(とても2行では書き表わせないのデス...これが!)

久し振りに接待で訪れた京都の料亭からの帰り道、学生時代に
別れた女性との最後の待ち合わせ場所になった祇園の随身門の
下で、別れたその女性の姿を見てしまう.
(女は、丁度この本の表紙の様な姿で男を待っていた).
あとで分かった事だが、その時その女性は、どうも主人公の子供を
身篭っていたらしい.
しかしその時主人公は、待ち合わせ場所に行かなかった.
(この女性は、三十年も主人公を待ち続けている事に..恐ぇえ!)

昨日と今日の時間が交差し、一体今は何処の時間帯にいるのか
読んでいても分からなくなるが、この展開は、浅田さんが吉川英治
文学新人賞をとられた「地下鉄に乗って」で実証済み.

それにしてもこの小説で登場する接待場所の料亭の女将や、京都に
住んで造り酒屋の婿養子ながら今は愛人と暮らしている親友、
タクシ−の運転手などと交わされる「京言葉」と云うのは、なにか
柔らか味があって、人情があって、心の襞に染み渡り、物語りの情景
にぴったりと合ってる様な気がする.


この本に収録されているのは「待つ女」一篇だけで、あとは浅田さん
とのインタビュー、座談会、対談集.
「文学」と聞いただけで本を閉じてしまう自分にも、著名な作家との
対談から、浅田作品の真髄やご本人の文学に対する考え方が”ちょびっ”と理解出来た...様な気がする.

それにしても、以前から読みたい(見たい)と思っている猫好きの浅田さんの本:民子、何時になったら
入手出来ることだろう.....
浅田次郎著(朝日文庫)
本あれこれ
待つ女
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