浅田次郎 著(集英社文庫)
/残侠
浅田次郎 著(集英社文庫)
本あれこれ
浅田次郎 著(集英社文庫)
天切り松 闇がたり
天切り松 闇がたりシリーズの第二巻、”残侠”.
本の”帯”にはこうある.


    ”男てぇのは、理屈じゃあねぇ”

”闇がたりシリーズ”は、今は、70歳を過ぎた天切り松
(名前は松蔵)が、罪も犯していないのにわざわざ気心の
知れた警察署長に頼んで(または昔なじみだとかの
警視総監に頼まれて!)、住み慣れた?留置場に入り、
留置されているヤクザなどを相手に昔がたりを聞かせる
パターンで統一されている.
その話が始まると、看守や非番の刑事、はては署長までが
ドドッと留置場に集まって来て、留置人と一緒に天切り松の
話に耳を傾ける.これが、また面白い.

今回は、題名の様に、78才になっても体の髄まで染み
込んだ任侠道を歩いている次郎長の子分”小政”が現れ、
賭場でのイザコザから安吉一家に関わる騒動を治めて
いく物語.
一宿一飯の恩義から、親分不在の安吉の家に押しかけた
ヤクザ一家の始末を付けるため、ヤクザ達に囲まれて家を
出る小政が、松蔵に言残す言葉......


 男てぇのは、理屈じゃあねぇ.
 おぎゃあと生まれてからくたばるまで、俺ァ男だ、俺ァ男だ、
 と、てめぇに言い聞かせて生きるもんだ.


”残侠”には、この他、目細の安吉を付け狙う東京地検の
辣腕検事、”おしろい”こと白井の鼻を明かす話から、
安吉の子分”書生常”の恋物語、”振袖おこん”に恋した海軍
中尉との別れ、など.

解説は、昔よく時代劇で活躍され、今は演出家/プロデュ−サ−をされている”大山勝美”さん.
その解説の終わりに、浅田次郎さんの事を、天切りの語り口を真似てこの様に表現されている.

:大山さんが病気で入院されている時、同室になった84歳のお婆さんのグチを聞かされて...
     お姐さん、週刊誌を読むのもようござんすが、あっしは、浅田次郎さんの小説を
     読むことをおすすめしやす.
     何てったってあの方は、辛え思いや弱え方の気持ちが良く判るお人でやす.
     苦労してやすから、浅田さんの本を読みやすと、ひしゃげて萎えちまった気持ちが、
     しゃんとなりやす.
     生きる元気が湧いてきやす.
     流行の言葉でいやァ、癒されるんでやす.

小説の中身もさることながら、大山さんの解説も素晴らしい、”残侠”でした.
     
TOP I BACK