六月の山岳部月次山行で西丹沢へ入る事になり、
同角沢とザンザ洞を別々のパーティで登って、
東沢乗っ越しで合流する計画が立てられた.
我々(K木、Hさん)は、ザンザ洞を担当.
その頃、”昔の人は麻ザイルで登ったんだから、
沢登りにナイロンザイルは使わない”というお達し
が出ており、ゴワゴワと始末に終えない麻ザイル
をザックに押し込んで丹沢に向かった.

■6月18日
小田急線の新松田駅からバスで玄倉まで行き、
林道を歩く.途中、2〜3ケのトンネルは真っ暗
でおまけにカーブしているが、みんな不精して
電灯を出さないので岩に頭をぶつけたり、水溜り
に落ちたりしながら、手探りで通過.玄倉から
2時間でユーシン着.ツエルトを張って寝る.

ザンザ洞

山の日記
”麻ザイル”で登った思い出の記録です
■6月19日
5時半にビバーク地を離れ、同角沢に入るT村さんのパーティと別れて檜洞沢出合いに向かう.
檜洞沢を遡行して小さな滝をかけているザンザ洞の出合いに6時半着、ワラジを履く.
出合いの小滝を越え、すぐ一の沢が右岸から流入、次いで左岸から二の沢が入ってきた二俣状の所で、
ザンザ洞の最難間F1.20mの滝だが、上部10mは小さくハングしていて、ホールドに乏しいらしい.
下部10mをノーザイルで登って中段に出る.いよいよ、ゴワゴワの麻ザイルを取り出す.
一度ザックから出すと、もう二度と再び収容しきれない感じ.アンザイレンして、K木がTOPで取り
付いたが、落口直下のハングがどうしても乗り越せないらしく、ザックを置きに戻って再挑戦する.
上部から垂れている捨て縄と、たった1本打ってあるハーケンに頼り、苦労してF1の落口に出た.
ザイルの流れは全く悪く、まるで「1本の棒」の様.ザックを吊り上げ、Hさん、自分の順序で、3人/1時間の
F1を終了.それからは、もうザイルは二度と使わずザックに縛り付けたままとなった!.
F5は”象の鼻”と呼ばれる10mの滝.鼻の部分はカンテ状になっており、コケでヌルヌルして一度ズルッと
滑ってしまった.F7の大滝20mは、岩がボロボロで左岸より高まきして落口へ.沢が平凡になり、水流も
少なくなってきた所で二俣らしい所が現れ、さらに行くと小さなルンゼが右から入ってきた.
ここは左に行くべきだった.どちらの沢も大きさが変らないので右に入ってしまった(左に行くとキレットの底へ
出られる).ルンゼを少しつめて、大休止.タバコを吸いながら、靴に履き替える.
ルンゼを辿ってドンドン高度を稼いだが、稜線には11時50分着.ザンザ洞に入って5時間掛かった.

もう集合時間に間に合わないが、ガスが深くて視界はゼロに近く、現在地点も不明.ザンザ洞の頭付近でウロ
ウロし、やっとキレットへ下る.キレットの底には橋が掛かっていた.
石小屋の頭へ登り、同角沢へ下る.東沢乗越の手前で、心配したT村さんが迎えに来てくれていた.
集合時間に遅れること1時間半で、やっと東沢乗越の手前の、同角沢遺言棚の落口に到着.
休んで飯を食っていたら、突然、ザザッ−と目の前のガケを”馬”が降りて来た!.
何でこんなところに”馬が!”っと、よく見たら、太った”鹿”だった.一瞬の出来事で、我々に驚いてすぐ登って
行ってしまったが.....

小川谷林道はうんざりするほど長く、3時間、ほとんど休まず歩いて玄倉へ.三鷹に着いたのは夜の8時.
初めて入ったザンザ洞は意外に岩が脆く、また”麻ザイル”に悩まされた沢だった.
ザンザ洞 最悪の滝F1
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68.6.18