71.10.23
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ザックを置いて、また戻ると手を引いてガレを終わる.そこから少し急な岩道を登ると、種池小屋の赤い屋根が
すぐ目の前になり、快適な草原に出た.12時40分、種池小屋着.小屋は閉まっていた.
冬に入るから良いだろうと勝手に決めて、小屋から少し離れた草地に天幕を張る(ここらは幕営禁止地区だ).
幸い雪がたくさん残っており、水を作るにはことかかない.

真っ白に雪を被った立山、剣が素晴らしい.見える限りの山の名をかたっぱしから教えたが、下山の時には
みんな忘れていた.

■10月24日(曇→雪)種池小屋/幕営地から鹿島槍往復
朝から鹿島槍にはガスがかかっていやな天気である.今日はあそこを往復すると言ったら、それだけで行く気を
無くした様だ.8時に出発し、爺岳をトラバースして行くと初雪が残っていて気分が良い.冷池小屋を通り、布引岳
の登りに入ると、そろそろバテ始めた.幸い雷鳥の親子が居たので大休止し、気をそらせておいてから出発する.
オーバーズボンを履き、キルテングをつけた妻は、冬山の完全装備にふくれあがっている.
山へ入って初めて会った3人パーティに、鹿島槍の山頂直下で追い越される.
ガスで周りが全然見えない鹿島槍南峰に12時30分、到着.頂上は−5℃.
小雪がちらつき始めたので、写真だけ撮ってすぐ下山、布引岳まで降りると、本格的な吹雪になって来た.
冷池まではまだ下りなので良かったが、爺岳へ登り返す頃になると歩き方が心もとなくなり、ピッケルに
もたれて休む事が多くなった.歩きたくない、先へ行けと言う.
黒部の谷からまともに吹きつける雪が、面の皮の厚い自分でさえ、ひりひりする程痛い.
何か遭難ムードになって来たので、早めに妻の腰にゼルブストを着け、引っぱる事にする.
爺岳南峰の最後の登りを引っぱり終わり、種池側へ90度曲がると、後は楽な下り.
気分的に楽になったのかげんきんなもので元気が出始め、「もぅいいわ!」なんて、自分からサッサと
ゼルブストを外してしまった(これだから女連れのパーティで生残るのは女なんだと思う).
1日で周りが真っ白になった天幕に着き、ホッとする.4時20分着.
当然の事ながら、山へ入ると飯の炊き方からエサの作りからまで、まるでダメ.
食事の用意が出来たところで、シュラフで寝ていた女サーブをたたき起こす.

■10月25日(快晴)種池小屋/幕営地から扇沢
素晴らしい雲海だ.真っ白になった鹿島槍が天幕の正面に輝いている.
雪を払ってパッキングし、もう一度、剣を見に行く.昨日の雪で、来た時より一段と白さが増した様だ.
雪が降ったのは稜線だけだったらしく、種池から少し下がると雪は無くなった.
晴れ上がった初冬の景色を楽しみながら、2時間30分で扇沢着.

▲▼帰って2、3日して妻に...
「あなたと行くと、いつもしごかれてるみたいで、楽しくないわ!」と言われた.
自分では意識せずに、いつの間にか部の連中と山行している調子が出てしまったらしい.
おかげでこの山行以来、すっかり信用を無くしてしまった....
10月に爺岳から、鹿島槍を登った記録です.
■10月23日(雨→晴)大町〜扇沢〜種池小屋/幕営地
扇沢は土砂降りの雨だった.
大町から車で朝の6時に着いたものの、この雨では先が
思いやられる.どうも後立に来ると、初日はいつもこうだ.
全くの所知らないという事は強いもので、早く行こうと妻は
せきたてている.
雨具を完全にして8時に出発.扇沢の左岸、爺岳の南尾根
に付けられている登山道を登り出す.
4年前の春山合宿で、T村さんと今日の様な土砂降りの中
この尾根を下降し、翌日、また爺岳へ登り返したのが、昨日
の事の様に思い出されて懐かしい.
種池までの登山道は、ずっと南尾根を巻き気味に登って
いる.2時間程登ると、さしもの雨も小降りになって朝日が
差し始め、岩小屋沢岳に虹を見つけた女ダヌキは大喜びだ.
種池小屋へ出る手前に、100m位のガレが落ちていて、
やっと人間1人が通れる程の道が、ガケにへばり付いて
いた.
果たしてここまでで足にガタが来ている妻は、もう行けない
と言い出した.いくらなだめてもダメなので、やむなく
シュリンゲで道のカンバの木に体をフィックスし(落ちるから)
背負子の上に妻のザックを載せてそこを通過.

晩秋の鹿島槍/妻と

山の日記
天幕場から新雪の鹿島槍