どういう訳か、スキ−を持って天狗へ行く事に
なった.T葉さん、T村さんと、”北八ッへ行こうか、
ただ行くだけでは面白くないから、スキ−でも
持って行こう”と、軽い気持で話が纏まった.
時期は、雪の多い1月に決まる.

■1月18日(晴)茅野〜渋の湯
会社を終るとすぐ飛び出し、茅野からタクシ−で
行ける所まで行く.月明かりで電灯も付けず、
すっかりいい気分になって渋の湯着.
渋の湯では珍しく旅館に泊り、一風呂浴びて
フトンにもぐり込む.翌日からの苦労も知らずに
良く寝られた.

天狗岳 スキ−登山

山の日記
黒百合フュッテ付近の雪景色
”苦闘のスキ−登山”と言う題名が
ふさわしい記録です.
■1月19日(晴)渋の湯〜黒百合ヒュッテ
旅館の前でスキ−を履き、足慣らしのために少し滑ってみると、”うん、これなら行ける”と本気でそう思った.
他の二人と違い、自分はシールが無いのでそこらに落ちている荒縄を拾ってスキ−に巻きつける.
沢沿いの2m以上もの積雪に一歩スキ−を踏み込むと、さっきの意気込みは何処へやら、これはえらい事に
なった!と、又、本気でそう思った.一歩進んではスキ−を引き寄せ一息付いて又一歩.沢の途中で遂に諦めて
スキ−を脱ぐが、輪カンを持って来なかったので腰までもぐる.スキ−を揃えて、その上に載ってみたり、色々
試行錯誤している内にやっと沢沿いから離れ、尾根に出る.ここから又、スキ−を付けて平らな雪原を行く.
少しはましな姿で進んだが、樹林帯に入って又傾斜が強くなり、最後の方はスキ−を担いで黒百合ヒュッテへ.
あとの二人は、しっかりスキ−を履き、シールも付けて登って来たが、やはり苦労している.
途中で、商船大学の二人パーティに追い越され、後から聞くと、彼らの倍以上、時間が掛かっていた.
午後からフュッテ前でスキ−の猛練習をするが、文字通り”どろ縄”.T葉さんが一人で天狗を往復する.
ヒュッテは、客も少なくてムードもいい.又、今日もフトンにもぐり込んで、ヌクヌク寝る.

■1月20日(晴)黒百合ヒュッテ(西天狗 往復)〜渋の湯〜茅野〜帰京
T村さんと、西天狗を往復.帰って来てから、又、ヒュッテ前の斜面でスキ−の猛練習をするが、なぜかやれば
やるほどヘタになって行くので、最後はフュッテのそりを借りて遊んだ.それでも三人とも口だけは達者で、
帰りは見ておれとそればかり.
遂にその時は来た.渋の湯まで滑走するのだ!.
意気込んで、ヒュッテ前から滑り出したら、たちまち転んで雪の中へ.この後は、もうスキ−の上に載っている
よりも、雪の中に埋もれている方が長かった.両手で木にしがみ付いたり、キャと叫んで岩にぶつかったり、
散々な目にあう.二人はと見れば、T村さんは岩手出身だから慣れている様で、体に雪の付き方が少ない.
T葉さんは、自分とT村さんとの間ぐらいか.もっとも自分が一番良く転ぶから、後の二人のことなんて見る
余裕も余り無い.平原状の所はまだ良かったが、往きに苦労した沢に入るとすぐスキ−を脱いで担いだ.
最後までスキ−を付けていたのはT村さんだけだった.
渋の湯からのバス道は、雪がコンクリートされていて快適だったが、スピードが出過ぎて止まれず、曲がり角
では必ず転んで止まった.

途中で追い越した登山者に落としたピッケルを届けて貰う(要は、自分で思ったほど早く滑っていなかったと
いう事)オマケまで付き、最後まで話題の尽きないスキ−登山だった.
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68.1.18