仙の倉岳は、谷川連峰の最高峰であり、
この地方特有の「ドカ雪」が降る、豪雪
地帯でもある.
このため、北尾根の7つのピークを登って
頂上へ行くには補給が問題になるため、
部として初めて極地法(ポーラー)により、
冬の仙の倉岳を目指す事になった.

北尾根については、夏の合宿で上半を、
さらに本番前の12月に、偵察を兼ねて、
ベースキャンプ予定地の小屋場の頭に
登り、若干の物資をデポした.
メンバ−:T樫、S島、M本、Y中、F井

冬の仙の倉岳・北尾根

山の日記
林道からの北尾根(12月の偵察時)
冬山合宿で、初めて極地法により
仙の倉岳・北尾根を登った記録.
■12月30日(吹雪)土樽駅〜小屋場の頭(B・C)
ゴーゴ−とストーブが燃えている土樽駅を一歩出ると、途端に厳しい冬山の世界に入る.
群大ヒュッテまで約4時間.吹雪の中を膝までのラッセルで到着.雪の積もった丸木橋を恐る恐る渡って、小屋場の頭
取り付きの森林帯へ入り、ここで輪カンを付ける.本格的なラッセルが始まる.粉雪なので、胸までもぐるが、意外に
楽なラッセル.80歩/1人をノルマにして、空身で80歩登るとザックを取りに戻り、次の人がそこでザックを下ろして
80歩のラッセルにいどむ.しかし、潅木の密集した急な尾根は、1歩進むたびにズルズル落ちて苦労する.
後から女性ばかりのパーティが続いて来たが、ラッセルの速さが我々と異なるため、常に先行させて貰う.
12時30分、小屋場の頭に到着.12月のデポ品を回収し、5人用の冬用テントを張ってB・C設営.
K4方面の偵察に行き、左右ともスッパリ切れ落ちたリッジまでトレースを付け戻る.

■12月31日(吹雪)小屋場の頭(B・C)〜シッケイの頭〜イイ沢の河原(A・C設営)〜B・C
本日の行動はシッケイの頭を越えた所にA・Cを設営して、第一次アタックのS島、Y中が入る.残りの3名はルート
工作と荷上げ.B・Cを6時に出発、昨日引き返したリッジまでは、ラッセルしてあるので楽に到着.
左に毛渡沢、右に仙の倉沢と、左右ともスッパリ切れ落ちたリッジが100m位続いている.1ピッチザイルを使い、
後は丹念にラッセルして行く.リッジが終ると、K4への急登.周りはガスの中.昨日の女性パーティは、かなり後から
ついて来る.K3、K2はラッセルに終止.K1の登りで、前の奴の足が頭の上に来る様な雪壁があり、1ピッチザイル
を使う.赤布の付いた標識竹を付けながら、ガスの中を行く.シッケイの頭を登ると、正面からすごい風が吹き付けて
来た.ここを過ぎると、夏は広大な草原のイイ沢の河原になるが、今はガスと吹雪でどこがどこだか分からなくなる.
適当な地点で、A・Cを設営する事にして行動を中止し、斜面を削って平らにしてからA・C用テントを引っ張り出して、
A・Cを設営.アタック隊のS島、Y中を入れて、サポートの三人はすぐ下山.20mも離れると、手を振っていた二人の
姿はガスの中に消えた.登りに5時間掛かった所を1時間で下り、休憩したのはK4のみ.
夕方の定時交信では”ガスで何も見えない.明日は暗いうちに出発する”と伝えて来た.

■1月1日(快晴→強風雨)B・C〜A・C〜仙の倉岳(平標山 往復)〜A・C
今日は、元旦.個人装備と食料を持ち、B・Cを6時に出る.K2でアイゼンを付ける.遠くにK1とシッケイの頭が
朝日に輝いている
.丁度、万太郎岳の肩から初日の出.
A・Cへは、昨日の苦闘がうその様に、3時間で着く.A・Cで待つ事しばし、頂上から二人がニコニコ顔で帰って
来た.まず、第一次アタックは成功!.二人とはA・Cで別れ、彼らは今日、”B・Cを撤収”して、下山.
我々は、A・Cを唯一の拠り所として行動する事になる(これがあるので、事前の各隊の行動計画、装備、食料計画は
大変ややこしかった!).天気が崩れそうなので、明日の第二次アタックを繰り上げ、二人を見送ってからA・Cを
後にする.すぐ上のコブを越えると、イイ沢の大雪原が広がり、三の字の頭がその奥に聳えていた.
きれいにラッセルされた三の字の頭を越えると、待望の仙の倉岳の頂上はすぐだった
360度遮るものの無い頂上から、だらだらとだだっ広い尾根をラッセルして行き、うんざりした頃、平標山に到着.
頂上の指導標は、足の下になっていた.
三人とも、フラフラになりながら仙の倉岳へ戻り、大休止.A・Cには、午後2時に帰着.
夜半から、真冬だと言うのに雨となり、一晩中もの凄い風が吹き荒れてテントが飛ばされないかと心配だった.

■1月2日(雨、風強し)A・C〜小屋場の頭〜群大ヒュッテ〜土樽駅
暗いうちに、完全装備でA・Cを撤収する.中里の灯がきれいだ.
6時30分にA・C跡地を出発.シッケイの頭とK1の下は、急なので後ろ向きになって降りた.
小屋場の頭まで休まずに1時間30分で到着.雪が付着して重いアイゼンを脱ぎ、尻セードをしながら群大ヒュッテ
まで降りて、行くとき”大正池”と名づけたダムの上で装備を外し、やっと落ち着いてのんびりした.

初めてやってみた極地法は.....割合うまく行ったと思う.
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72.12.30