最初は、遠見尾根から五竜岳の予定で計画が進み
2回の偵察も済ませていたが、出発3日前になって、
”北アルプス一帯で地震がある”との情報が入った.
参加メンバ−の間で色々揉めたが、結局、計画を変更
し”偵察の必要が無い所”という事で、仙丈/甲斐駒
を登り、黒戸尾根を下る
事になった.
メンバ−:I井、T樫、T村、H、F井の5名.

■12月29日(晴)伊那北〜戸台〜北沢峠
伊那北から1番バスで戸台へ.丹渓山荘まで、坦々と
河原を歩く.丹渓山荘で一休みして、北沢峠の登り
に入る.さすがに雪が深くなって来たが、トレースが
残っており、夏時間と殆んど変らない.しかし、八丁坂
の登りは、冬山用の装備、食料で重荷のためかなり
バテた.藪沢小屋付近は積雪30cm位で、タンネの森
を歩くと気分がいい(背中にザックが無ければなお
いい).北沢峠には、数十張のテントが並んでいた.
一番、仙水峠寄りに新品の冬用テントを設営する.

冬の 仙丈/甲斐駒〜黒戸尾根

山の日記
仙丈岳 頂上にて
遠見尾根〜五竜岳の予定が変更になり、
仙丈・甲斐駒になった冬山合宿の記録です.
■12月30日(快晴)仙丈岳往復
今日は、仙丈岳を往復するのみ.全員サブザックの軽装で出発し、単調な仙丈の登りに入る.
小仙丈の手前で森林帯を抜け、稜線歩きとなる.冬山では珍しい程の快晴で、正面に北岳、その向うに
富士山がシルエットになった、素晴らしいお天気.
「F井と来るといつも天気が悪い」と言っていた人達が、今日は静かだ.北沢峠から4時間で仙丈岳の頂上.
余り天気がいいので、頂上には1時間もいて展望を楽しみ下山.滑らないところも無理に尻で滑り、1時間半で
北沢峠に帰った.行動時間は、たった7時間.後は、各自、日向ぼっこやシュラフ干しで時間を潰す.

■12月31日(吹雪)北沢峠〜仙水峠〜駒津峰〜甲斐駒頂上
朝から、猛吹雪.7時半に北沢峠を出て、目を開けていられない程の猛吹雪の中を仙水峠へ向かう.
仙水峠は風の通り道で、体が吹き飛ばされる様な風.直角に左へ曲がって、駒津峰を3ピッチ掛けて済す.
時々、登頂を諦めて下山してくる軽装のパーティとすれ違う.
駒津峰に上がると、甲斐駒が正面に見えるはずなのにゴーゴーという風とガスで何も見えない.
六方石のやせ尾根を難無く通過し、雪崩に気を付けながら、甲斐駒のトラバースルートに入る.
所々太腿までもぐりながら、浅いルンゼを何本も渡り、摩利支天側のザレに入る.
岩場が出て来て、重荷には堪える.頂上の手前のコルに這い上がると、さすがにグッタリした.
ここから50m位先の甲斐駒の頂上へ行き、握手.全員雪だるまになって、今合宿のテーマミュージックを
ヤケ半分に吹雪に向かって歌った.
テントは、黄蓮谷のつめの大きな岩を背にした窪みを整地し、設営.張り終わって少しすると、もう半分程
雪に埋って、テントは”安定”した.風当たりは最高だが、明日は元旦、初日の出を楽しみに寝る.

■1月1日(吹雪)停滞
初日の出どころか、すぐ目の前の頂上さえ見えない猛吹雪!.昨日の内に、天気が悪ければ停滞と
決まっていたので予定通り.ましてや、こんな日に黒戸尾根など下れたものでは無い.
停滞というと食料制限になるが、今回は五竜の計画そのままだから、食料は豊富にある.旨い物から
ドンドン食べ、外へ出るのは生理現象の時だけで1日は終了.テントは2/3が雪に埋まり、5人が横に
なると、狭くなって来た.

■1月2日(晴)甲斐駒頂上〜黒戸尾根〜白須〜帰京
昨日より、いくらかましな天気.気温は−25℃を記録した.雪に埋もれてバリバリに凍ったテントを掘り出し、
パッキングして黒戸尾根に向かう.一昨日からの吹雪でトレースは全く無くなり、赤石沢側へ寄らない様
注意しながら、腰までのラッセルを続ける.三本槍から下は、八合目の鳥居まで夏だと岩場の続く所だ.
今は、白一色に、所々黒い岩が突き出ていて、ラッセルは腹まである.岩峰を右に左に泳ぐ様なラッセルを
続けて行く.赤布だけが頼り.ラッセルは遂に胸まで来て泳ぐ様になる.八合目の鳥居は頭につかえる程
雪に埋もれていた.八合目から下はラッセルも楽になり、お天気も回復し視界も良くなって来た.
七合目の小屋で、当部と関係のある雪表クラブの方達から暖かいシチューを頂き、大休止.
彼らに”黄蓮谷より難しい”とおどかされた五合目までの鎖場も難なく通過、カユモチ石の水場で重い
アイゼンを脱いだ.
駒ヶ岳神社から白須までは、田んぼの中を走る道路を三々五々歩いた.うまい事に、少し前に行ったトラック
からこぼれたらしいミカンが適当な間隔で落ちており、T樫さんと交互に拾っては食べながら歩いた.

振り返ると、甲斐駒はもうガスに包まれて、何も見えなくなっていた.
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