一の倉沢は、南稜テラスから上がガスに包まれて
いた.出合いの河原で朝食を取り、テールリッジに
取り付く.同行は、T村さんとU松.
テールリッジは途中、左下の烏帽子スラブへダイ
レクトに落ちている、5m程のスラブがあり針金が
付いていた.烏帽子奥壁の下のバンドを伝って左
にトラバースすると南稜テラス.

一の倉沢/二ルンゼ

山の日記
一の倉沢で、一番ポピュラ−と言われる
二ルンゼを、6月に登った記録です.
数パーティが順番待ちをしている.我々は、ここを通過して本谷バンドをトラバースし2ルンゼに向かう.
黒々と縦に割れている顕著なルンゼの基部で登攀具を付け、ビレー用のハーケンを打って準備完了、登攀を
開始した.
TOP:T村さん、セカンド:U松、の順.
セカンドのU松が頭上の落口に消えると、動いているのはザイルだけ.静かな登攀前の一時が流れる.
時々、奥壁の方からハーケンを打つ乾いた音が聞こえてくる.
ザイルを伝って水が体を濡らしてきた頃「F井さぁん、いいですよ−」と、U松の声が聞こえて来た.ビレー用に
打ったハーケンを回収し登りだす.岩が濡れているので、なるべくコケの付いていない所を選んで登る.U松の
所へ着くと、T村さんは既に20m上にいて、U松は、上と下を同時にジッフェルしていた.
中央壁側を登ったり、2ルンゼに戻ったりしながら10ピッチで草付きの小さなコル、ザッテルに着く.目の下に
広河原が見え少しガスが切れ始めて、広大なツルツルの滝沢スラブが現れた.これまでルンゼの中を登って
きたので、目前に開けた滝沢上部はいかにも明るい感じがした.
予定では、これからBルンゼを通って稜線に出るが、どれがBルンゼなのか判断が付かない.
谷川岳特有の、下向きに生えた草付きをとにかく直登する.ジッフェルポイントが無いので、ザイルも使えない.
股の下からは広河原が遥か下に見え、気が疲れる.時々現れる黒い岩塔を巻いたり、直登したりして、上へ
上へと登り続ける.右側にでかい岩穴を持つ土の壁直下に出た.足元はスッパリ切れ落ちている.
ここでまた、アンザイレンする.
T村さんTOPで、土の壁に手首がスッポリ入る様な穴を開け、左から廻り込む様にして抜け切った.これまで
で、一番嫌なピッチ.土壁を通過すると傾斜も落ちて、国境稜線の縦走路まではすぐだった.

一の倉は天気も悪かったせいか、相変わらず暗い陰気な所というイメージが拭い切れなかった.
数百人の遭難者を出していると言う事が、一の倉の印象を変えているのかも知れない.
一の倉沢
TOP I BACK
67.6.11