数年間定着していた部の秋山合宿は、穂高へ入る事
が多かった.この年は、リーダ−クラスで1パーティ
組み、明神岳・東稜から北穂高岳まで縦走して、涸沢の
別働パーティに合流する計画を立てた.
■10月10日(小雨→晴)上高地〜明神〜東稜〜前穂
急行アルプス6号で松本に着き、タクシ−で上高地へ.
夜行で来たので、殆んど寝られなかった.
午前5時、上高地を出発.明神までは、直接、涸沢へ
入るY岡達と一緒で、賑やか.明神で彼らと別れ、我々
3人(S島、M本、F井)は橋を渡って明神池へ.
東稜の取り付き点が分からず、神社で長い髪を鋤いて
いたジーパン姿の女官に道を聞く.
取り付きの養魚場から、しばらく深い樹林の中を登り、
モレーン状の沢を少し登って、右手の小さな草の繁った
ルンゼに入る.このルンゼが宮川のコルへ行く唯一の
ルートで、見分けにくかった.
宮川のコルは気分のいい所だ.紅葉が美しい枯れた草原
で、ガスってさえいなければ、見晴らしがいいだろうに.

明神岳・東稜〜北穂高(初冬)

山の日記
”東稜”核心部の凹角
10月の秋山合宿で、新雪の明神岳・東稜
から北穂高岳まで縦走した記録です.
右に大きく岩の下をトラバースして草原の中の細い道を上がると、ヒョウタン池に出た.よく名づけたもので、
上から見ると文字通りの形をしている
.ここが東稜の末端.時刻は8時30分、小雨が降り出して、いやな天気.

東稜を辿り始める.急な草付きと岩場が交互に現れ、細いリッジ状の所には冬のフイックスや赤布が
残っていた.大きな岩峰を越えると、東稜のコル.テントでも張れそうな所だが、左右はずっと切れ落ちている
草付きのコルだ.ガスが切れて、突然すぐ右手に新雪を被った前穂高が現れた.その巨大さに3人とも
圧倒されてしまう.

コルから上が、東稜の核心部で、岩峰の乱立する中に20mの凹角がある.
登攀具を付け、15分程、草付きの岩場を登ると、本を開いて立てた様な大きな凹角の下に出た.
左の側壁にもルートがある様だが、ツルツルのフェースで、凹角を登る事にする.M本がTOPで取り付く.
凹角を半分程登って、右壁のフェースに移り、これを10m上がると終了点.ハーケンはベタ打ちしてある.
S島が登った所で後に続く.フェースに移る所で、油断してちょっとスリップしてしまった.2人の所に着き、
ザイルを巻いて直登を始める.日の射さない場所は雪が凍りついていた.
正常ルートは、東稜を大きく左に巻いて行く様だが、3人ともルートに関係なく直登し、明神T峰にピョコンと、
飛び出した.3人で握手を交わし、東稜末端から約3時間の登攀を終了.
雪を被った前穂が、すぐ目の前に見える.
T峰からA沢のコルを通り、足首程になった雪の稜線を辿り始めたが、バテてしまって意外に時間が掛る.
結局、2時間掛かって、見覚えのあるケルンの乱立した前穂頂上に、14時40分着.
早速、頂上にF井のダンロップ吊り下げテントを張り、もぐり込んだ
この夜は、1日で上高地から前穂頂上まで登れた嬉しさと、明神池で会った女官のウワサで、3人共、
遅くまで起きて喋っていた.

■10月11日(快晴)前穂〜奥穂〜北穂〜涸沢
朝方、よく冷えたので雪はカンカンに凍っていた.
6時30分に前穂の頂上を出て、雪と岩のミックスした吊り尾根を辿り始める.
スリップするので、なるべく岩の出っ張りに乗って歩く.
吊り尾根から奥穂へ上がり、穂高岳山荘へ下降.ここでは、スベアを出して水を作り、1時間ものんびりした.
涸沢槍の下りは夏でも悪いが、雪が凍って張り付いているので、なおさら悪い.アイゼンを持って来なかった
事が悔やまれるが、なるべく岩の上をつま先だって降りる.
ここまで来ると、前穂北尾根の稜線が雪に映えてきれいなシルエットに浮び上がっている
最低コルから北穂へ向かう途中で、町の山岳会に所属しているT葉さんのパーティに出合った.
雪の状態が悪いので、北尾根の計画を中止し、北穂から奥穂への縦走に変更したとの事.
涸沢のテント場で会う約束をして別れ、北穂へ向かう.
北穂は相変わらずの人の山.
滝谷の入り口を覗いてから、快晴の南稜を駆け下って、Y岡達のいる涸沢へ降りた.

久し振りに、気の合った2人との楽しい山行だった.
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74.10.10
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