どういうわけか先輩のT樫さんと数馬の三頭山荘に泊まっていた.
最初から小屋泊まりの予定で沢へ来たのは初めてである.
三頭沢もいいが、三頭山荘の山菜料理が旨いと聞いて出掛けて来たのであるが、二人共、すっかり
この山荘が気に入っていた.飯が旨いのである.特に山菜料理が素晴らしかった.
食卓には20位の小鉢が並び、それには種類別の山菜が盛られている.
宿のおばさんが、ご飯をよそってくれながら、1つ1つ説明してくれ、何杯もお代わりした.
静かな宿と旨い料理に満足して、明日のとんでもない状況も知らず、二人ともぐっすり寝た.

翌朝、外へ出ると空は灰色で、今にも降り出しそうなお天気である.
案の定、沢へ下りる頃から”雪”が降り出して来る.
小さな木の橋から沢へ下り、”ワラジ”を履く.沢の水は冷たい!の一語に尽きるが、戻る気なんか
二人共さらさら無く、三頭沢の遡行を始める.三頭沢「大滝」までは、なるべく水に入らない様、
へずった.雪はドンドン積もって来て、落ち葉の上はもう白くなりかけている.
足の裏に雪が付いたままで岩を登ると滑りやすく、慎重に行く.
三頭沢の大滝は、しんしんと降る雪の中、水しぶきを上げていた.両岸は白い.
T樫さんと二人なので、ノーザイルのまま登り出す.ホールドは、雪が付いていて、いやらしい.
コケがぬるぬるしているので時間を掛け、なるべく水線通しに登る.
落ち口に出てからは、急に平凡なゴーロとなり、暖かい靴下に替えてホッとした.寒いので、ここまで
ほとんど食事らしい食事をしなかったが、ザックの中の昼飯を平らげ、生き返った様な気分になる.
とうとうザックから一度もザイルを取り出さなかった.濡れたゼルブストをしまい、軽くなった荷を
背負うと沢のつめに向かう.意地悪く、この頃からミゾレになった.
三頭山、頂上直下の小さな峠を越え、奥多摩湖に下りると、そのまま奥多摩湖管理道路を歩き、湖を
半周して小河内ダムに出た.

三頭沢も、今では奥多摩有料道路の工事でほとんど埋まってしまったと聞く.
もう三頭沢を登る機会もなくなったと思うと、ワラジで雪の中を歩いた想いでが懐かしい.

雪の三頭沢

山の日記
この山行では、写真が1枚もありません...寒くて、それ所では無かったんです!.
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65.10.17