岩登りさえ満足にやっていない内に、いきなり2月の氷漠
登攀に連れて行かれた.連れて行ってくれたのはT村さん、
G藤さん.マムシ沢は、屏風岩直下に突き上げる小さな沢
であるが、初めてという事もあり、不安要素は一杯あった.

三ッ峠駅前の夜中まで開いている店で仮眠.
まだ暗いうちに出発してダルマ石に向う.やっと空が明るく
なってきた頃ダルマ石に着き、一休みしてから登山道の急
な登り口を左折して、少し藪を漕ぐと河原に出る.ゴーロを
歩いてコーモリ沢の出合いを過ぎ、さらに行くとマムシ沢
出合い.ガラガラした伏流状の沢床を飛んでいくと、両岸が
極端に狭くなり遭難のレリーフがある二俣.右俣は陰惨な
廊下状で、本流は左だ.なにか白いなと思ったら、本流側
に懸かっているF1が全面凍結していた.下部は80度位の
傾斜だが、落口まで15mは完全なブルーアイスでテカ
テカに光っている.

マムシ沢

山の日記
初めての氷漠登攀を経験した記録です.
3枚のアイスハーケンをガチャつかせながら、T村さんが氷漠に取り付いた.ピッケルで穴を開け、
アイスハーケンを差し込むとハンマーで叩き込みカラビナを掛ける.
ザイルを通すと氷にステップを切って、さらに頭上にハーケンを打つ.安定した動作で氷漠に三枚の
アイスハーケンを残し、T村さんは落口に消えた.
いよいよ自分の番.アイゼンの紐を確認して氷漠に取り付く.岩登りの基本動作さえ満足に分かって
いない上に、磨いてきたとは言え、アイゼンは既に冬山合宿で先が丸くなっており、ステップに安心して
足が置けない.
それでもT村さんがザイルを張ってくれるので、安心してガムシャラに落口へ出た.
G藤さんが上がって来て、やはり凍結している小滝をノーザイルで次々超えて行く.左岸、右岸共、枯れた草と
ボロボロの岩で、沢の真ん中だけ青白い帯の様に氷が詰まっている.
暫く行って氷も少なくなって来た上に、帰りの時間も迫ってきたので、右岸の急な稜に逃げた.
ここがまた急で、潅木にすがって上がって行くと、やっと屏風岩の地蔵ルートの下に到着、真っ白な富士山が
三人を迎えてくれた.帰りは、八十八大師を廻って、三ッ峠駅へ下山.

やはり、岩登りの基本も知らずに行ったのはまずかった.
自分が、本格的に岩登りを始めたのは、この山行からである.

マムシ沢 F1 
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66.2.6