部の若手連中が、さかんに”霞沢岳が
いい”と騒いでいるので、それじゃあ、
余り人の入らない徳本峠からという事
で話が纏まった.同行は、S水とH.

真っ暗な涸沢のベースを午前4時に出る.
ヘッドランプをつけて、時々石につまづき
ながら、歩き慣れた横尾への道を下る.
横尾、徳沢と順調に通過し、明神手前の
徳本峠入口に7時30分着.ここで、先に
下山するT葉さんのパーティと別れ、徳本峠
への道に入る.

霞沢岳

山の日記
10月の秋山合宿で、徳本峠から
霞沢岳に登った記録です.
峠の直下はジグザグの道で、約2時間近くかかり、徳本峠着.徳本峠には前々から登りたいと思っていたので、
実現出来て嬉しい.峠の台地にツエルトを張り、不要な物を残す.

Hが足の爪を痛めていて、これからの長い道程は少し無理なので峠で待つ事になり、S水と2人で笹の中の
不明瞭な道に入った.ジャンクションピークまでは、余り人が通らないので草原状を気分良く歩けたが、
そこから先、急に道が無くなってしまった.樹林の中を、赤布やナタ目だけが頼りの、心細い登下降が始まる.
一つ赤布を見つけると、小走りにそこまで行き、又、二人で次の赤布を探し回る.赤布が無くなると、地面の上に
わずかに残っている踏み跡を探し、何も無くなると二人バラバラに分かれて、見つけた方が声を出す.
完全な樹林帯で、周りの山容で見当も付けられないし、地図も余り役に立たない.それでも、方向だけは確実に
掴んでいたから、二人の進む方向に霞沢岳がある事だけは確かだと自信を持ち、小走りに歩く.
予定では、丸一日掛かるので、ゆっくりしてはいられない.
徳本峠を出てから1時間30分、殆んど1ピッチで歩いて、やっと霞沢岳と六百山の稜線が見えた.
かなり明瞭な踏み跡が出てくる.稜線を頭の上に見ながら、急な草付きを登り、這松のトンネルを抜けると、
ピョコンと、稜線に出た.
ガスの切れ間に霞沢岳を探すと、左の方に旗らしい物が立っているのが頂上らしい.
一度下って這松をこぐと、さっき見たピークに着いた.もう、時間は午後1時30分になっている.
下降ルートは八ェ門沢を予定していたが、それらしい沢は見当たらない.地図を出しても、正式な下山路が記入
されておらず、又、あの道を徳本峠まで戻るかと思うとウンザリした.
ふと気がつくと、2〜3日前に八ェ門沢からここへ登ったS藤の話と、頂上の様子が違う!.
S藤は「霞沢の頂上には、変な白い旗が立ってましたよ!」と、言ったはず.
我々の居る頂上には赤布の旗.2〜3日で白布が赤布に変わる訳が無い.
丁度、交信時間なので、トランシーバーで涸沢のベースから奥又白を経由して徳本峠へ向かっているY岡の
パーティを呼び出し、S藤に代わって貰う.「S藤!、頂上には白い旗なんてないぞ−」「おかしいなぁ、俺達が
登った時には、確かに、木の枝に白い旗がありましたよ−」.
すったもんだしている内にガスが切れて、左手の方にここより高いピークが現れ、なるほど白いものが頂上に
揺れている.疲れた体にムチ打って、本当の頂上へ向かう.
霞沢岳頂上には、午後2時着.交代に写真だけ撮って、頂上には1分も居なかった.
幸い下から登って来た3人パーティに会い、八ェ門沢の下降点も確認(さっきのニセ霞沢の下だった).

八ェ門沢はひどく急で石がゴロゴロしており、落石が恐いのでS水にぴったりくっついて降りる様に言ってから、
文字通り、駆け下りた.滝の様な所も構わず飛んで下る.
いい加減、足にガタが来た頃、やっと、赤い屋根の帝国ホテル前に飛び出す.
時間は既に午後3時40分、ここから又、みんなの居る徳本峠へ登り返さなくてはならない.
上高地、明神とフラ付きながら通過、徳本峠入口に着く.
峠を登っている最中に真っ暗になってしまい、ヘッドランプを出す.
途中で心配したS藤が迎えに来てくれ、2人共バテバテになって今朝張ったツエルトに転がり込んだ.

涸沢を出てから、14時間30分の長いアルバイトだった.....
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74.10.13