部として、春の後立山縦走を何年か続けて来たが、
比較的入り難い種池〜烏帽子間をトレースすべく
扇沢から入山.先発、後発に分かれ、先発隊は
種池にベース設営後、鹿島槍と爺岳東面の登攀、
その後、後発隊と合流して烏帽子まで縦走の予定
で出発した.
メンバー:先発隊:M月、T樫、T村、F井
      後発隊:I井、H

鹿島槍〜針の木峠(春)

山の日記
種池のベースキャンプ
連休に鹿島槍から針の木峠を縦走した
記録です.
■4月29日(雨)大町〜扇沢〜種池直下でビバーク
昨夜は、大町のステーションホテル泊り.朝、部の山縣先輩の紹介で来て頂いた車に乗り、扇沢へ入る.
雨が降っており、先が思いやられる.
扇沢トロリーバス駅でパッキングをし直し、扇沢へバックする.薄汚れたデブリの山を越えて、扇沢を忠実につめて
行く.荷が重いのでたびたび休み、扇沢のつめから、笹薮の中央尾根に取り付く.この尾根は、種池小屋から
ダイレクトに扇沢まで落ちているだけあり、ひどく急だ.雪はグサグサで股まで落ち込み、ラッセルがきつい.
4人交代で、必死のラッセルを繰り返して行くが、なかなか捗らない.その内、胸まで雪が来て、雪の状態も悪く
なってきたので、雪の締まる日没まで待つ事になり、ツエルトを被った.
2時間待って、T村さんが空身で80mザイルをフイックスしに登り、再度登り始めたが上方から雪混じりの烈風が
吹き下ろしてくる上、足元も相変わらずグサグサの雪.フイックスの末端に4人が集まった所で、ビバークと
決定され、大木の根元を整地し4人並んで座る場所を確保する.
傍の大木へザイルを固定し、全員、猿回しの様にザイルに繋がってツエルトにもぐりこんだ.
上のほうでサラサラと水音の聞こえる、いやなビバークサイトだった.

■4月30日(快晴)ビバーク地〜種池〜爺岳(往復)
鳥の巣の様なビバーク地を離れ、右に少しトラバースして良くクラストした雪壁を直登すると、種池小屋の前に出た.
ここまで40m、2回のフイックス.種池小屋は、赤い屋根だけ雪の上に出ており、ベース設営後、昨日のビバークで
濡れた衣類を屋根に干す.ベースは池の真上.真っ白に雪が付いた剣、立山が正面に見える.
本日は、爺岳を往復しただけに止まり、爺東面の登攀は中止された.

■5月1日(雨)鹿島槍(往復)〜爺岳南尾根〜扇沢〜国民宿舎
雨の中を鹿島槍往復.ガスの中、周りの全く見えない布引岳の稜線を、風と雨にたたかれながらヒィヒィ言って
登り、南峰に上ってすぐ下山.昨夜、後発隊が、我々の登った扇沢中央尾根を登らない様、連絡に下る事が
決定されていたので、爺岳南峰でM月/T樫さんと分かれ、T村さんと爺岳南尾根に入る.稜線通しにバンバン
下り、扇沢出合に着くと土砂降りの雨になっていた.雨が激しいので、上の二人には悪いが、国民宿舎に泊る
事にする.定時交信で種池のベースを呼び出すと、上の二先輩は、テント内に入ってくる水をかき出すのに
必死との事.

■5月2日(快晴)扇沢〜爺岳南尾根〜種池
国民宿舎のうまい朝食を食べ、山に戻る.昨日、泊ろうかと言っていた道路の下の土管は水がザーザー流れて
おり、財布を持って来てくれたT村さんに感謝する.扇沢出合で後発の二人を待つが、7時の定時交信でも
二人は現れない.時間はドンドン過ぎるので、とうとうT村さんが大町まで登山者名簿を確認しに行く.
10時頃T村さんが戻り、登山者名簿には二人の名前があったとの事.”I井さんの事だから、爺岳南尾根を
登っているのではないか”と、二人で、昨日下った南尾根を登り出す.ベースの二人は、中央尾根を偵察に
下っているらしい.南尾根の途中でI井さんの吸っているタバコの空き箱が木に挿してあり、登りの
スピードを一層、速めた.爺岳南峰直下に二人の姿が見えた時は、二人とも心底ホッとした.
南峰で、I井さん達に加え、ベースから迎えに来てくれた二人と合流.先発、後発の苦労話に花がさいた.

■5月3日(快晴)鹿島槍〜キレット小屋(往復)〜種池
後発隊のため、鹿島槍を再度往復.昨日とは打って変わった上天気.半分雪の埋まった冷池小屋を通り、
雷鳥などを見ながら南峰へ.南峰からはIさん達と分かれ、キレット小屋まで往復した.
キレットの底からは完全に岩登りで、アイゼンをガリガリ言わせながらキレット小屋手前のピークへ.
キレット小屋は、半分雪に埋まっていた.キレットの帰りは、アップザイレンで下る.

■5月4日(快晴)種池〜岩小屋沢岳〜鳴沢岳〜赤沢岳〜スバリ岳〜針の木岳〜針の木峠
M月さんは用があるため、早朝一人で爺岳南尾根を下山.残りのメンバーは、今日一日掛けて針の木まで
行く.予定は大幅に狂っている.3日ぶりに重いザックを担ぎ、岩小屋沢岳へラッセル開始.
前半の疲れが出て、ラッセルは遅々として進まない.岩小屋沢岳を過ぎ、遥かに見える鳴沢岳、赤沢岳へグンと
下って登り返す.赤沢岳からは、黒部湖が良く見えた.赤沢岳を過ぎると、次はスバリ岳.黒々とした岩塔の
山で、振り返ると、通ってきた赤沢岳との稜線がきれいに雪のカーブを描いていた.ここまで来ると針の木岳
は目の前.しかし登りは急で最初は岩場状、頂上直下は雪稜.這うようにして、最後はピッケルを確実に打ち込み
針の木岳を登り切った.針の木の頂上で記念写真.稜線はここから90度直角に左へ曲がる.夕方になり、
日差しが長くなってくる.針の木峠の下りで、一ヶ所垂直の雪壁があり、ザックを背負ったまま、飛び降りた.
10時間以上掛かって針の木峠の小屋に着く.

■5月5日(快晴)針の木峠〜蓮華岳〜北葛岳(往復)〜針の木峠
昨夜、烏帽子までの予定が繰り返し検討されたが、結局、蓮華岳までの往復と決まった.
T村、T樫、F井の三人で、さらにその先の北葛岳まで往復し、針の木峠に戻った.

■5月6日(快晴)針の木峠〜針の木の大沢〜扇沢(黒部ダム)〜大町〜帰京
早朝、雪の締まっている内に針の木の大沢を下る.ここは、小屋が吹き飛ぶ様な、大きな雪崩の出る所.
日差しが強くて焼き殺されそうな中をドンドン下り、傾斜が緩くなった所で、アイゼンを脱ぐ.
意外に早く着いたので、I井さんの提案で黒部ダムを見学に行く
ダムの上をゾロゾロ歩いていたら、真っ黒に日焼けした上皮が剥けてヒラヒラしているのが珍しいのか、
観光客に写真を撮られた.
ゆっくりダムを見学し、景色を楽しんで帰京した.

翌年の春山合宿で残った針の木〜烏帽子を縦走したが、丸二日掛かった上、七倉岳〜船窪岳間は、
細いリッジでフイックスの連続に終始した.
予定通り行動して、果たして烏帽子まで行けたかどうか.......
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