当面の目標であった聖岳北尾根の冬季初トレース
を、この年の冬山合宿で行う事になった.その最終
偵察と百間洞山の家への荷上げのため、11月に
総勢10名のパーティで入山した.

聖岳北尾根偵察と荷上げ

山の日記
百間平のカモシカ
■11月18日(晴)八王子〜天竜峡
会社が終ると同時に飛び出す(既に、時間中、準備は済ませてある).
八王子から天竜峡行きに乗り、夜遅く天竜峡駅着.駅に寝る.
駅員さんが、親切にお茶を入れてくれた.

■11月19日(晴)天竜峡〜平岡〜梨元〜北又渡〜百間洞山の家
梨元へ来るのもこれで4回目.20kmの軌道も、もうどこに水場があって、トンネルを幾つ通ると北又渡でと、
みんな覚えてしまった.
梨元から歩き始めると、軌道車がやって来た.荷物だけでなく、我々も乗せてくれるという.
おかげで18km地点まで、あっという間に到着.
こんな事は初めてなのでみんなニコニコしている.時間が中途半端になってしまったものの1日稼げると、
そのまま百間洞山の家へ登る事になった.2日行程を1日で消化出来るのも、軌道車のおかげだ.
大沢岳のコル近くまで来ると夕方になり、気温も下がって来る.雪が付いているのでアイゼンを付け、
電灯を出す.山の家に着いたのは夜の8時だった.

■11月20日(吹雪)山の家〜百間平(偵察)〜山の家
3パーティに分かれて行動.北尾根を直接登るパーティと、夏、下降用に使った沢をつめるパーティは、一緒に
百間洞沢を下降して行った.T樫さん、Hさん、F井は、赤石岳から北尾根上部の偵察に出発する.百間洞沢を
つめて行ったが、雪が激しくて全員真っ白になる.百間平の登り口は視界不良で分からず、適当に進む.
百間平に入ると、さえぎるものが無いので目を開けていられない程のもの凄い吹雪.赤石岳と百間平のコルで
ツエルトをかぶり天候待ちをしたが吹雪はやまず、目の前の聖さえ見えない.赤石を中止し、山の家に帰る.
夕方、赤石沢に下りていたT村パーティが帰り様子を聞くと、凍結していて大分悪そうだった.
北尾根を登っているI藤パーティは、途中でビバークしていた.

■11月21日(吹雪)山の家〜百間洞沢下降〜赤石沢〜裏赤石沢/往復
北尾根パーティの下山をサポートするため、百間洞沢を下降.今日も、引き続き吹雪いている.
百間洞沢の下降は、雪が不安定に付いているため困難を極めた.途中行き詰ってアップザイレンを強いられたり
しながらやっと赤石沢に着き、そのまま裏赤石沢へI藤パーティを迎えに行く.雪にまみれたI藤パーティと合流し、
引き返す.裏赤石沢の出合で、凍った滝にK木が落ち、その場でツエルトを張ってK木はパンツまで着替えた.
我々は、ツエルトの周りで足踏みしながら待つ百間洞沢の出合で、無名沢の偵察に行ったT村、U松パーティ
と合流し、全員が百間洞沢へ入る.ここからは樹林帯の中でも傾斜がきつく、3回、フイックスを張った.
疲れてきてフラフラになっているが、みんな口だけは達者.
もう少しで百間洞山の家へ着く地点で、今度はK柳さんが、沢に落ちる.あわや氷づけかと思われた瞬間、
跳ね返る様に戻ってきたので全然濡れもせず.その様子がおかしくて大笑いになった.
吹雪の中で、山の家を見つけた時は救われた思いだった.全員、雪だるまで、山の家に帰着.
今日は、吹雪の中10時間行動.厳しい1日だった.

■11月22日(快晴)山の家〜百間平〜大沢岳〜大沢渡山荘
快晴である.偵察が不充分なので、直接下山する本隊と別れ、T村、S島、K木、F井の4名で、百間平から
北尾根を再度偵察し、大沢岳を縦走した後、本隊を追いかける事になる.
百間平ではカモシカを見て気を良くし、唐松峠で本隊と合流、大沢渡山荘まで下った.

■11月23日(晴)大沢渡山荘〜梨元〜平岡〜帰京
暗い内に山荘を出発.不精し、小屋で使ったロウソクを持って照らしながら大沢渡へ.20kmの軌道を歩き
梨元−平岡.飯田からは急行赤石号で帰京した.

こうして百間洞山の家にデポした冬山用物資も、その後、合宿計画が縮小されたために意味がなくなった.
しかし、みんなで真剣に北尾根を目指していたこの時期は”輝いていた”と、今でも思っている.
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66.11.18
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