前年度の春山合宿で、鹿島槍〜烏帽子まで行く予定が
途中の針の木峠で下山したので、その続きを縦走すべく、
針の木峠から入山した.
メンバ−:T樫、A見(部外)、F井

■4月28日(雨)大町〜扇沢〜針の木峠
昨夜は、大町から車で扇沢トロリー駅まで来て、
ステーションホテル泊り.朝方から、雨.
トロリ−駅から関電の工事用道路を歩き、針の木の
大沢に入る.今年は大沢の下部に大きなデブリが出て
いたが、本格的に雪崩れていないので、気持ちが
悪い.大沢の上部はガスっていて見えない.
モクモクとスプーンカットの雪面を登る.
大沢の喉を過ぎると、雪がグサグサで急になってくる.
狭くなった沢の中をジグザグにラッセルし、針の木小屋
の少し上に出て、小屋に入る.今年も無人の小屋に
一晩お世話になる.

針の木峠〜野口五郎岳(春)

山の日記
烏帽子岳
前年に引き続き、針の木峠から野口五郎岳
まで縦走した記録です.
■4月29日(雪)針の木峠〜蓮華岳〜北葛岳〜七倉岳〜
             〜船窪小屋

外は、風が無い代わりに、凄いボタン雪が降っている.
小屋を出て、すぐ蓮華の急な登りを腰までラッセルして蓮華の稜線に出る.ここから北葛岳へは、稜線から
直角に90度曲がるが、蓮華の頂上がだだっ広いのでなかなか下降点が見つけられない.去年ここに来た
ばかりなのに、3、4回も上下してやっと下降ルートを見つけ、八ヶ岳の赤岳からキレット小屋へ降りる様な
岩場を下り、コルへ出て北葛岳へ登り返す.
左に大きな雪庇が出ており、その上を右寄りに歩いていたら、大きな熊の様な足跡を見つけた.
かなり急な深いルンゼを登って、頂上直下は左から回り込み、北葛岳に着く.ここからは未知の世界.
七倉岳へは、余り高低差が無い代わりにラッセルが深くてヘトヘトになる.相変わらずガスが深くて何も見えないが、
いつの間にか雪は止んでいた.細長い七倉岳の頂上に出ると、ガスが切れ、すぐ下に船窪小屋が見えた.
正面の船窪岳への稜線を見たら、思わず寒気がした.左側がスッパリ切れ落ちた潅木混じりの細い稜線が、船窪岳
のふもとまで続いており、その先が...無い!.稜線もブツブツに切れているので、通れるのか心配になったが
とにかく、船窪小屋へ下る.小屋は雪に埋もれていて先客があり、奥の氷室みたいな所にもぐりこむ.

■4月30日(曇)船窪小屋〜船窪岳コル
先行パーティの後に続いて小屋を出る.樹林の中だが、期待通り?、すぐナイフリッジになりザイルを出して
フイックスを始める.先行パーティは8人ですぐ追い付く.しかしフイックス工作に時間が掛かり、なかなか追い越せ
ない.ザックを背負ったまま40mザイルを伸ばし、潅木に固定してA見さんが通り、T樫さんはF井のジッフェル
で上がってくる.小さなピークが細い雪稜を持って乱立し、それらを丹念に越えて行く.
船窪岳コルへ2回のフイックスで下降すると、目の前に船窪岳への急な雪壁が待ち構えていた.
先行パーティはザイル2本を繋いで、80mのフイックス工作に掛かっている.
我々は、大休止.ここまで、十数ピッチのフイックス工作でくたびれた.先行パーティがなかなか動かないので
、先が思いやられるが行動中止し、コルにテントを張る.コルは広く、少し雪を削り取ったらすぐテントは張れた.
夕方、雪壁の偵察に出る.

■5月1日(快晴)船窪コル〜船窪岳〜不動岳〜南沢岳〜烏帽子岳〜烏帽子小屋
雪の締まっている内に雪壁を登らなければならないので、朝早く出る.コルから少し登って、空身で40mザイルを
フイックスし、ザックを取りに下降.次のピッチは雪のリッジに跨る様な格好で急な雪稜を太い木の所まで.
ここで、3人が集まり、ザイルを巻いて雪壁を登る.高度感が凄く、股の間から今朝出て来たコルが見える.
幸い、雪が締まっていてアイゼンが良く効く.
船窪岳の頂上に這い上がると、正面に針の木岳、少し右手に蓮華岳のどっしりとした山容が素晴らしい.
通ってきた、キレットの様な七倉岳と船窪岳間の稜線が切れ落ちていた.
パッキングをし直し、不動岳に向かう.烏帽子岳はここから見ると、不動様の頭みたいに黒い角が一杯出た
奇妙な形に見える.長い樹林帯を通過し、雪の小ピークを上下して不動岳の頂上へ.
樹林帯で休んだ時、T樫さんの郷里から送って来た”はたはた”を食った.今朝焼いて持ってきたやつで、
塩気が効いて、疲れた体には大変旨かった.
稜線は、ここから直角に右へ曲がる.全く、この稜線は複雑に折れ曲がっている.
南沢岳コルまでは、だだっ広い雪の斜面で、下り始めると雪がグサグサで股まで落ち込む.
雪崩を誘発させない様に、広大な斜面を三人バラバラになって進む.やっとの思いで南沢岳を過ぎると、
またまた広大な雪原が広がり、右側に長い間待ち望んでいた烏帽子の岩峰が聳えていた.
しかし、なおも長いラッセルが延々と続く.日がかげっていくらか暑さから開放された頃、やっと烏帽子岳の
トラバースが終り、ニセ烏帽子の向うに烏帽子小屋が見えた.
ニセ烏帽子で大休止、ラッセルからやっと開放される.表銀の稜線が良く見えた.
入山してから今日で4日目.フイックスとラッセルに明け暮れて「槍まで行く」計画の半分も来ていない.
後4日で槍を越えるには予備日が1日も無い.全日行動でこのまま槍まで行くには、余りに前半で体力を使い
過ぎたと考えると、計画縮小せざるを得なくなった.烏帽子小屋でそう結論が出るとうまい物からドンドン食った.
夕方、大阪のパーティがやはりくたびれ果てた格好で転がり込んで来て、「オマケの積りで針の木から入ったん
やけど、本番になってしもぅたなー」と笑いながら話していた.

■5月2日(快晴)烏帽子小屋〜三ッ岳〜野口五郎岳(往復)
3日続けて快晴.サブザックで野口五郎を往復
当初の目的地だった槍が遠くに見えた
予定が変わったので、昨日と同じくうまい物からドンドン食った.

■5月3日(快晴)烏帽子小屋〜ブナ立尾根〜濁沢小屋〜葛温泉
今日も快晴.二日前にトラバースした烏帽子岳を往復する.頂上の足幅位の岩にアイゼンのまま登って、記念
撮影.小屋に戻り、パッキングし直して、ブナ立尾根に入る.実に急な尾根で、勢いがつき過ぎ、雪の中に
スポッと腰まで入って、自分で自分を掘り出すハメになる場面もあった.
沢音がしてきた頃、やっと重いアイゼンから開放された.
濁沢小屋から軌道を歩いて葛温泉へ.A見さんはそのまま帰ると言うのでバス停で別れ、T樫さんと二人、久し
振りに畳の上で長々と体を伸ばした.その夜は、二人で1本のビールに酔っ払って、良く寝た.

■5月4日(晴)葛温泉〜大町〜帰京
再び、快適な宿のどてらから汗臭い登山服を着て、大町経由で帰京.

計画が半分に終ったとは言え、部として未知の山域だった「針の木〜烏帽子」がトレース出来た事は、一つの
収穫だったと思う.部の春山合宿に部員が二人というのも寂しいが”続ける事は力なり”である.....
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68.4.28