富士山西面での雪上トレーニングが終って、馬返しまで
下りてくると、ここから富士吉田の駅までは、唐松の林と
落ち葉の積もった真っ直ぐな広い道が続いている.
ここを歩くのは、いつもトレーニングの後だったから疲れ
切っていたが、馬返しに着くと、吉田まで歩かなくては帰
れないと、一種悲壮な気持ちになったものである.
ここは6回も歩いた(....と、言うより”歩かされた”).
馬返しには、富士吉田の手前の浅間神社まで、ひとり
たった200円で運んでくれる白トラックが待っていて、
立ち止まると運転手が寄って来る.気分が緩むので、
見えなくなるまで歩いてから休み、長いアルバイトに備
えてパッキングをし直す.
後は、ただひたすら歩くのみである.

富士の裾野

山の日記
この道は、殆んど曲折が無く真っ直ぐなので気分的に変化が無い.前の奴の尻と、キスリングと、唐松しか
ない.時々現われる曲がり角と、たまに行き交う車だけが楽しみだ.
今度曲がれば浅間神社だ!と、そればかりが頭にあった.次の角まで人に会うかと、賭けをした事もある.
幾つ角を曲がれば浅間神社に着くか、覚えてしまった.砂埃で、体中真っ白になって浅間神社に着くと、
ここにはきれいな水が流れていて、埃だらけの靴を洗えた.
浅間神社から富士吉田の街中をさらに1ピッチ歩き、
大きな石の鳥居が現れると、やっと駅だった.

リーダーの許可がおりて、駅前の店でビールを飲むと、体中の水分が抜けてしまっているので、コップ1杯で
すっかり酔っ払ってしまう.正午、山頂に居て裾野を走る真っ直ぐな道を見、夕方には富士吉田駅のホームに
居て、昼にはあの雪煙をあげる頂上に居たのかと思うと、何だか自分が信じられない時もあった.

人間とは、実によく歩けるものである.
5合目からの吉田大沢
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