涸沢合宿の4日目、U松と初めて滝谷を登った.
当初は、T村さん、U松の予定だったが、体調を崩した
T村さんのピンチヒッタ−だった.

U松と、快晴の北穂高・南稜を登る.
ムチャクチャに急ぎ、1時間で北穂に着く.すぐ、松なみ岩の
コルから、滝谷へ.
第二尾根は、主稜と北山稜に分かれており、登攀対象になる
のは北山稜である.
取り付きまでは、主稜を下る.
這い松と、所々岩場のある主稜は、特に問題となる場所も無く
自由にルートを選んで下った.
主稜の途中から明瞭な踏み跡が北山稜へトラバースしている.
草付きの細いバンドを辿ると、第二尾根の取り付きに出た.
見上げると、カンテ状のすっきりとした岩稜である.
登攀の準備をしながらジャンケンをしてTOPを決め、U松が
勝って、1ピッチ目に入る.気持ちよくザイルが延びて行った.

滝谷第二尾根

山の日記
水野クラック
夏の涸沢合宿で、初めて滝谷を登った
記録です.
朝早いせいか、ハーケンの音も聞こえず、滝谷は静かである.
首が痛くなるほど上を見上げてザイルを繰り出していると、30m程上がった所で、ストップした.
真上に登れそうなのに、右へ回り込もうとしている.声を掛けると「岩がグラグラしてて落ちそうなんですよ−、
どいてて下さい」の返事.岩くずがバラバラ落ちて来る.ピッチを切って、後に続くと、なるほど、
一抱えもある岩が、岩に挟まってグラグラしていた.そのまま、U松を追い越してTOPを交代.
ハーケンは殆んど使わず、もっぱら岩にシュリンゲを巻いてカラビナを掛ける.P2までのリッジを跨ぐ様にして
登っていると実にいい気分.ザイルは40mづつ交互に伸び、快調なピッチだ.
P2フランケを登るパーティを見ながら、気心の知れた相手なので、のんびり行く.登りながら、U松に写真を撮る
と言ったら、リッジ上なのに両手をポケットに入れ登攀中とは思えない格好をした.

水野クラックの下で、またジャンケンをした.ここは有名なクラックなので、お互い自分がTOPをしたかったから!.
今度は、自分が勝ってクラックに取り付く.
クラックと言っても、半分ほどの所でクの字に曲がっている.自分のクレッタ−はくさびとはならず、本来のクラック
登りは出来なかった.クの字に曲がる所はハーケンが1本打ってあり、これにカラビナを掛けて右上へトラバース
気味に登って行く.ここまで来ると、もう終ったのも同じ.U松に写真を撮ってくれと頼んだら、ジッフェルしていた
ザイルをサッサと離して写真を撮ってくれた(危ネェ!).
U松が登り始める.さすがに、彼は基本どおり忠実にクラック登りで上がって来た.
大休止し、ザックの食料を平らげると、登攀具を替わりに詰め込んで、松なみ岩のコルへ向かう.
空模様が気になっていたが、雨がパラパラ降り出して、ガスも濃くなって来る.
松なみ岩の下を通って滝谷を出る頃には、もう雨が激しく降り始め、雷がすぐ傍で鳴り始めた.
すぐ終るだろうと、ちょっと雨宿りの積りで北穂高・南峰側の岩穴まで走り、穴に入った途端、土砂降りの雨と
凄まじい雷が襲って来た.この時点から、我々は穴から一歩も出られなくなってしまった.

この大雷雨が、西穂高・独標で、松本深志高校の学生12名の尊い命を奪う事になろうとは、神ならぬ身の
知る由もなかった.
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