■72年7月29日/夏の大源太山
越後中里駅で下りたのは我々だけだった.
T葉さん、M本と、ここから谷川連峰を縦走し、
途中で仙の倉沢を登って三国峠まで行く長い
山行の初日.
誰も居ない待合室でボソボソと握り飯を食い、
真っ暗な駅前の国道に出る.地図を頼りに右
へ曲がり、墓の傍の田んぼ道を行く.

大源太山の夏と春

山の日記
春の大源太川の渡渉
大源太山は、国境稜線から離れた
山ですが、ほぼ独立峰のいい山です.
三人共、恐いので、むやみによく喋る.上越線を陸橋で渡る頃、ようやく空が明るくなって来た.
旭部落を抜け、田んぼの畦道へ出ると、大源太川に下りられた.川を渡って林道に入り、しばらくしてまた沢を渡る.
今度は、左岸に付けられた立派な登山道を行く. ガイドブックには殆んど道が無いとあり心配していたが、
一安心する.再び沢に下りると、そこは大源太登山口だった.

この先、水が無いので水筒にも腹にも一杯詰めて登りだす.
文字通りの直登が始まった.よくこんな道が付けられたと思うほど、実に真っ直ぐに上がっていて、高度は
ドンドン稼げるが、きつい登り.2ピッチでヤスケ尾根に出る.やっと樹林帯を抜け、遥か上のほうに大源太
らしい頂上が見える.登りづめで休む暇も無い.いくら登っても着かない頂上.いい加減ヤになって来たが、
3ピッチ目に、やっと頂上直下の岩場に出て、ここを這い登ると、いかにも頂上らしい狭さの大源太に出た.
越後中里から5時間半、先はまだ長かったが、やっと念願の大源太の頂上に着き、感慨無量だった.

■74年5月1日/春の大源太山
前回と同じく、3時10分に越後中里駅着.今回は、大源太山を登って、芝倉沢での合宿に合流する計画だ.
同行は、T永さん、夏に一緒に来たM本.前回恐かったお墓の道も、季節が春の為か、余り恐くは無い.
旭部落を過ぎ、大源太川へ下りると、雪が出てきた.川は、雪解け水がゴウゴウと音をたて、夏の様に、石を飛ん
では渡れなくなっていた.三人であちこち浅い所を探し回ったが、いい所が無く渡渉する事に決定.靴とズボン
を脱ぎ、ザックに縛り付けてから、手頃な流木を支えに川へ入る.5秒と入って居られない水の冷たさ.ジッと
ガマンして、対岸に近づくと、焦って走る様に渡った.岸に上がると、しばらくは足の感覚が無く、口をきく気力
も無かった.2回目の渡渉点は、完全に周りが雪の壁に囲まれ激流となっている場所だった.
とても川へは入れなく、木を倒して細い橋を作り、恐る恐る対岸へ渡る.
大源太取り付き点は、靴を濡らしながら、石を飛んだ.そこからは、夏のように登山道がはっきりせず、
急傾斜の長いルンゼをキックステップで直登した.100m程登ると、ルンゼのどん詰まりは竹の藪となり、雪
が硬くてステップも切れない.右にトラバースして潅木を漕ぐと、ようやく夏道に出られ、ホッとする.
ここから、ヤスケ尾根の急登が始まった.道のど真ん中に大きな雪のブロックがあって、ピッケルで這い登ったり、
相変わらずしごかれる.結局、8時間掛かって大源太の頂上に着いた.
頂上からは、七ッ小屋山を越えて、冷たい雨の中を蓬峠の避難小屋へ行き、小屋の中にツエルトを張った.
翌日は快晴.芝倉沢のベースまで下り、合宿に合流、雪上トレーニングを行った.

大源太川の渡渉と、激流を眺めながら雪の斜面をトラバースした時は、本当の所、戻りたい気分だった.
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